国際森林年とは

日本の森林の変遷とその対策

2011年は「国際森林年」であるとともに、「森林・林業再生元年」です。日本の森林の蓄積は、1965年~2007年の約40年間で約2.5倍となっている一方、木材の自給率は3割弱と外国からの輸入に頼っています。その結果、森林が活用されていない、また間伐等の手入れが遅れることで森林がもつ多面的な機能が低下している森林が多くなっており、新たに木材を利用することで日本の森林・林業を再生していく取組みが求められています。

手入れが遅れる日本の森林

手入れが遅れる日本の森林

日本は、国土の約3分の2が森林に覆われた世界有数の森林国です。 かつて、戦時中の必要物資や戦後の復興資材として大量の木材が必要とされたことから森林の伐採が進みました。そこで、国土緑化運動などが展開されて植林が進められた結果、戦後には森林面積は増加し、その後その面積が保たれています。
しかしながら、日本の森林は、林業の採算性の悪化や、農山村地域の過疎化・高齢化等を背景として、間伐をはじめとする適切な森林整備が十分に行われていない森林が少なくなく、森林がもつ多面的な機能が低下している状況にあります。
適切な間伐を行うことを通して、【1】残った樹木の成長が促進することで災害に強い健全な森林を育成するとともに、 【2】森林内に陽光を差し込ませることで下層植生が繁茂させ、表土の浸食や流出を防いだり、 【3】多様な動植物の棲みかを提供することで生物多様性を高めることが求められています。
また、「京都議定書」で日本が世界に約束した温室効果ガスの削減量6%のうち、約3分の2にあたる3.8%は、国内の森林による吸収でまかなうことが目指されており、地球温暖化防止の観点からも、間伐等による森林整備への期待は高まっています。

低迷する日本の木材自給率

一方で、日本では1964年に木材輸入が全面自由化されてから、急激に外国産の木材の供給量が増加し、1969年には外国産の木材供給量が国産材の供給量を上回りました。その後は、外国産の木材輸入量が増加するとともに、林業の低迷等による国産材の供給量が減少することで、1995年以降は20%前後の低水準で推移しています。特に、2002年には過去最低の18.2%となりました。
その後、国産材の供給量が増加する一方で、外材の輸入量は大きく減少していることから、木材自給率は上昇する傾向にあります。しかしながら、2009年の木材自給率は27.8%となっており、依然として低い水準で推移しています。

活用することで、日本の森林を育む

活用することで、日本の森林を育む

こうした中、日本の人工林の多くが間伐等による手入れが必要な段階にありますが、収穫して木材資源として利用ができるおおむね50年生以上(高齢級)の人工林も年々増加しつつあり、2007年時点で35%になっています。そして、現状のまま推移した場合、2017年には日本の森林の6割にまで増加すると見込まれています。
そのため、世界の森林が依然として減少・劣化が進む一方で、日本の森林の蓄積は、1965年~2007年の約40年間で約2.5倍と増加している状況を踏まえると、日本の人工林を適切な手入れを行い、利用が可能な木材資源として育てて、活用していくことが重要になっています。

森林・林業再生の幕開け

森林・林業再生の幕開け

こうした中、農林水産省は2009年12月に、森林・林業を再生する指針となる「森林・林業再生プラン」を策定しました。同プランでは、「10年後の木材自給率50%以上」を目指すべき姿として掲げ、森林施業の集約化や路網の整備、人材の育成等を通して、森林のもつ多面的な機能の高めつつ、先人たちが築き上げた人工林資源を積極的に活用して、山村の活性化や木材利用を通じた低炭素社会の構築を図ることとしています。
 さらに、2010年5月には、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が成立し、幅広い分野での木材需要を拡大することを通して、新たな「木の文化」を生み出すことが目指されています。
このように、2011年は森林・林業再生の幕開けの年でもあるのです。