国際森林年とは

国際森林年の取り組み

世界の森林の減少・劣化をくい止め、持続可能な森林管理・利用を拡げていくために、国連は2011年を「国際森林年」と定めました。「Forests for People(人々のための森林)」というテーマを定めて、私たち人類にとっての森林の重要性と、人ひとりの行動の重要性を示しています。そして、「国際森林年」の取組みは、2012年の「地球サミット(Rio+20)」にもつながっていきます。

背景と目的

世界の森林は、依然として面積の減少や劣化が進んでいますが、日本の森林も、間伐等の手入れ不足による質的な劣化が課題となっています。このように、世界の森林がおかれた状況を踏まえると、森林の持続的な管理・利用に向けた取組みを世界中で加速させる必要があります。また、1992年の「地球サミット」を契機に採択された、いわゆる「リオ3条約」と呼ばれる「気候変動枠組条約」、「生物多様性条約」、そして「砂漠化対処条約」は、それぞれの条約の目標達成を果たす際には、世界の森林の減少・劣化が大きな課題になっているという状況にあります。
こうした中で、世界の森林の減少・劣化をくい止め、持続可能な森林管理・利用を拡げていくためには、政府や森林所有者、林業関係者による取組みも重要です。しかしながら、企業や消費者も、原材料の調達や木製品の購入という事業活動や消費活動を通して関わりが深いことから、幅広い方々の森林への意識を高めていくことが必要です。
そこで、2006年の国連総会では、2011年を「国際森林年」とすることが決議されました。世界中の森林を持続的に管理・保全することで、私たちの世代だけでなく、将来の世代も森林の恵みを継続的に利用していけるようにすることの重要性について、あらゆる人々の認識を高めていくことを目的にしています。

国際テーマは「Forests for People(人々のための森林)」

国際テーマは「Forests for People(人々のための森林)」

2011年「国際森林年」の国際テーマは「Forests for People(人々のための森林)」で、世界の森林を持続的に管理・保全し、また利用していく際に、私たち人間が中心的な役割があることを示しています。
また、森林は人々の暮らしを守り、多様な生き物の棲み家となります。さらに、森林はさまざまな生命の源となる水を育み、食料から木材、医療品を生み出すとともに、地域から地球レベルで安定した気候や環境の維持に貢献します。こうしたことから、70億人の人類全ての生存と幸福にとって森林は欠かせないものであり、一人ひとりの行動の重要性も示しているテーマとなっています。

国内テーマは「森を歩く」

国内テーマは「森を歩く」

国際森林年の国内テーマは、「森を歩く」と定めています。サブテーマとして、「未来に向かって日本の森を活かそう」、「森林・林業再生元年」も定められています。
「森を歩く」というテーマは、森林に対して誰でも気軽にできる具体的な行動が「森を歩く」ことでもあることから、森林と関わる入口として、まずはできることからはじめてみよう、という思いが込められています。
日本の森林や農山村の現場に足を運び、間伐が遅れているうす暗くて草が生えずに土壌がむき出しになっている森林や、過疎化が進んで耕作放棄地や放置林が拡がっている農山村に足を運びに、その現状を体感することで、少しでも多くの方々が、森のためにできる行動を見つけ、行動するきっかけとなることを期待しています。
また、暮らしの中で「木をつかう」ことを通して日本の森林・林業を応援することも重要な取組みです。そのため、農山村地域に暮らし、森林に熱い想いを寄せている林業家や木工職人にふれたり、地域の木でつくられた温かみのある木製品の魅力を感じたりすることで、「未来に向かって日本の森を活かそう」、「森林・林業再生元年」というサブテーマへの貢献に繋がる行動をはじめるきっかけが生まれることも期待しています。

2012年「地球サミット」(Rio+20)につながる「国際森林年」

2012年「地球サミット」(Rio+20)につながる「国際森林年」

途上国における森林の減少・劣化により排出される温室効果ガスは、世界の総排出量の約2割を占めるなど大きな問題となっています。この為、地球温暖化防止の観点からも、その排出削減や吸収増大に向けた取り組み(REDD+)への要請が高まっています。
また、森林には陸上の生物種の約8割が生息・生育しており、森林の生態系は種・遺伝子の保管庫ともなっています。このため、2010年のCOP10で採択された「愛知目標」では、森林に関連する項目が多く定められており、生物多様性保全の観点からも森林の減少・劣化への対策が求められています。
こうした中、2012年6月に開催される「地球サミット(Rio+20)」では、主要テーマとして「グリーンエコノミー」と「持続可能な開発のための制度的枠組み」が位置付けられており、森林の減少・劣化という地球環境問題の解決を前進させる取組みについて、今後注目が高まってくることでしょう。
そこで、国際的な枠組みに関する議論を深めるとともに、企業やNGO等による持続可能な森林管理・利用に貢献する「グリーンエコノミー」の創出に向けた取組みにも期待が高まっていくことでしょう。
そのような観点から、今年の「国際森林年」は、2012年の「地球サミット(Rio+20)」に向けた助走としても、重要な1年になるのではないでしょうか。